フィリピンの教育制度改革-問題点-

2012年までフィリピンはアジアで唯一、中等教育が4年間しかない国であった。初等教育(小学校)が6年間、中等教育(高校)が4年間の6-4制で、その後は大学などの高等教育になっていた。日本の6-3-3制や、それと類似の制度を持つ国々に比べると、基礎教育(初等・中等教育)が2年間少ない。年齢でいえば、高校卒業時は16歳で、4年制大学に進学した場合、大学卒業時はまだ20歳である。この制度には様々な問題点があった。[/vc_column_text][/vc_column][/vc_row]

基礎学力の低さ

12年間分の内容を10年間で詰め込むため、教育の質が低くなる。国際教育到達度評価学会(IEA)の国際数学・理科教育動向調査では、フィリピンは参加国のなかで下位に位置する。言語の問題もあると考えられる。

失業率

フィリピンの成人年齢は18歳だが、高卒時は16歳である。16歳では精神的にもまだ未成熟で、就職先も限られる。雇用機会にも恵まれず、就職できない可能性は高くなる。実際、フィリピンの失業者の約3割は高校卒の学歴保持者であり、同じく失業者の半分が15-24歳の若年層なのである。

海外との格差

12年間の基礎教育を条件とする海外の大学に直接進学できない。2年間、国内の大学に在学するなどして時間を費やす必要がある。

ベニグノ・アキノ政権の教育改革

こうした基礎教育の問題点を解消し、「万人のための教育」(Education for All)という国連ミレニアム開発目標達成に近づくため、新たな制度を取り入れた。それは中等教育を2年間上積みし、さらに5歳児(Kindergarten、日本でいう幼稚園年長組)から公立教育を開始する【K-12制】である。K=幼稚園、小学校6年間、中学校4年間、そして高校2年間となる。そして幼稚園を義務化した。2012年度に小学校と高校に入学する生徒達に新制度のカリキュラムを適用し、2016年度には中等教育5年目を、翌2017年度には同6年目を実施することになっているが、今はその変遷で、校舎の増築などが追い付いていない学校が沢山あるのが現状である。

教室・教師・教科書不足の問題

フィリピンの教育分野は基礎教育の期間に関する問題以外に『教室不足・教師不足・教科書不足』という問題がある。
(2011年時点において、全国で教室が約13万室、教師は約10万人、教科書は955万冊不足しているというデータがある)
学校によっては教室不足に対処するため、下記の状態になっている学校がある。
※1つの教室を2つに分けて利用
※午前組と午後組とに分けて授業を実施
※体育館で授業

ドロップアウトの問題

小学校の段階からドロップアウトする子供が多い。貧困層は環境の影響により、学習意欲を失う可能性が高く、その上、労働力として使われる。つまり、【K-12制】を導入することで子供達の学力は向上するかもしれないが、2年学習期間が延長されることは、費用面での負担が増えることを意味し、学力の格差がさらに広がる可能性がある。

言語の問題

フィリピン人は特に計算が苦手である。この原因は言語に問題があると考えられる。小学校1・2年は現地語を使って算数を学習するが、3年生からはいきなり英語で学習する。つまり、英語と算数を同時に学びながら学習することになる。英語が苦手な子供は、必然的に算数が苦手になる可能性が極めて高くなる。フィリピンはアジア圏でトップレベルの英語能力を保持するが、一方でこのような問題がある。

フィリピンはその昔、教育水準がとても高い国として知られていました。しかしそれは教育の機会に恵まれた富裕層のなのである。この【K-12制】の導入によって、さらには2016年の大統領選挙により、フィリピンの教育制度はどのように再生・変化するのか、当団体ではしっかりと見守っていきます。