アジアの中でも多様性あふれる国、フィリピン。そんな国でスペシャルな人々、障がいを持った人々はどのような立場にいるのでしょうか?

スペシャルな人々

先日、フィリピン人スタッフとフィリピンの障がい者の現状について英語で話を聞いていた時のことです。障がいを持った人のことを、彼らは“a special person ”と表現しました。一方で、英語の障がい者という言葉にはa person with disabilitiesという表現もあります。disabilityには何かができないという意味が含まれいます。disabilityというマイナスなイメージの表現を使うのではなく、日本語で言う特別でプラスな意味を含むspecialという単語を使っていたのに驚きました。そこで、そのような考え方のできる国民のいるフィリピンで障害を持った人々がどのような状況に置かれているのか疑問に思ったので調べてみました。

多様性を受け入れる国

フィリピン人は多様性を受け入れる国民性を持っています。一切差別がないわけではありませんが、日本と比べてもLGBTの方々などが生きやすい社会です。というのも、スペインやアメリカ、日本の支配下にあった影響を受けてごちゃ混ぜの文化があることや、異なる宗教や言葉が多くあることが、異なるものに対して寛容な国民性を作り出したのです。

では、そのような多様性あふれる国フィリピンでは障がいを持った人々はどのような立場にいるのでしょうか?

フィリピンにおける障がい者の現状

フィリピンには、総人口に対して1.57%を占める障がい者がいると統計されています。しかし、この数字は障がい者の当事者団体から見ても過小に見積もられていると指摘があります。またWHOはアジア途上国全体の障がい者の割合を15%と見積もっているなど、実際の数字は1.57%よりかなり多いといわれています。というのも、障がいを持った子供は出生届も出されないこともあるからです。

またフィリピンにおいて、障がい者問題は貧困に深く関係しています。というのも、フィリピンの身体障がい者のうち41%がポリオの後遺症による手足の麻痺などです。実はポリオはワクチンで防げる感染症ですが、貧困層は経済的にワクチンを打つ余裕はありません。

また、日本では、ポリオワクチンは義務ではなく任意で、費用は6000円かかります。しかし、ワクチン代を払える経済的余裕があるため、1980年から日本でポリオは発生していません。

このように、貧困問題が障がい者の増加にまで影響しています。

社会保障制度の現状

実は、フィリピンの障がい者に対する社会保障制度は、アジア途上国の中では比較的進んでいます。比較的早い1992年にフィリピンで初めて障がい者の人権を認めるため、障害者のマグナカルタというものが制定されました。

その内容は、障がい者が非障がい者と同等に生きるための権利を保障するというものです。具体的には、全ての障がい者に教育の平等を保障することや、もし学校が障がいを持っているひとの受け入れを拒んだら違法などです。これらは、障がいを持っているからできないと諦める機会を減らすための制度が定められています。

しかし、この制度は十分に機能していないのが現実です。教育の場でも受け入れを拒否している学校も実際にはあります。また、選挙の投票所ではバリアフリー化がされておらず投票するのが困難なため、実質参政権がないのと同じです。また最近まで、聴覚障がい者が裁判を受ける際、当たり前に手話通訳が用意されずに進められていました。

行き届かない情報

上記の障がい者のマグナカルタは十分に機能してないことだけでなく、多くの当事者がこの制度の存在すら知らないということが問題です。

また、障がい者に対する優待制度もあまり知られていません。日本でいう障がい者手帳のようなIDを見せることで、米やパン、肉や卵など生活必需品が5%割引になるサービスがあります。また、VAT(12%の消費税のようなもの)の免除、レストランや映画館、薬代の20%割引などもあります。

しかし、この優待制度を利用しているのはたったの5万人しかいません。というのも、多くの人がマグナカルタと同様に存在すら知らないからです。当事者がこのような情報を知らないということは、政府が積極的な姿勢ではなく彼らの存在をあまり重要視していないということになります。

まとめ

異なるものに寛容な国民性を持っているフィリピンですが、だからといって障がい者に対する制度が整っているわけではありません。しかし、制度ではなく人々という視点から見ると、私たち日本人も見習わなくてはならないことが沢山あります。

それは、フィリピン人が持つ親切心です。彼らの当たり前のように人を助ける気持ちが、障がい者の方々への助けになっているのではないでしょうか。先日、松生杖をついた片足がない男性が協会にいくため車が行きかう道路を横切ろうとしているのを見ました。そこに、すかさず女性がサポートしに駆けつけたのです。国民の90%近くがキリスト教徒なので彼らは助け合うことを当たり前のように行います。


シンバンガビというクリスマスまで9日間行われる夜中のミサです。

もちろん、当事者の方にとっては国からの支援が整っているに越したことはありません。しかし、彼らと直接関わるのは人間です。そのため、人が人に優しくあるフィリピンのような社会も一つの理想なのではないかと感じました。