今世界でフィリピン映画が注目されています。今回は麻薬問題の根深さを描いた映画からリアルなフィリピンをみていきます。

今、世界がフィリピン映画に注目している!

フィリピン映画はここ10年間で様々な世界の映画シーンで存在感を強めてきました。また近年、世界の名だたる映画祭でフィリピン人監督の映画が多数賞を受賞しています。フィリピン国内でも第三の黄金期が到来したなど盛り上がりを見せています。

高く評価されているフィリピン映画の多くは、フィリピンの社会問題を描いた社会派映画ばかりです。そこで今回は1つの映画からフィリピンが直面する社会問題についてみていきます。

フィリピンの麻薬問題の根深さを描いた作品

映画『ローサは密告された』は第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得した他、世界の名だたる映画祭で高く評価された2016年の映画です。そしてこの映画の監督であるブリランテ・メンドーサ監督はフィリピンの国内外で高く評価されており、フィリピンを代表する社会派映画監督の1人です。

あらすじ

ローサはマニラのスラム街の片隅でサリサリストアを夫ネストールと共に経営している。かつての日本の下町のように、密接して暮らす人々のつながりは深い。ネストールはいつもだらだらしてばかりだが気は悪くない。店を切り盛りするのはローサ。ローサには4人の子供がおり、彼らは家計のため、本業に加えて少量の麻薬を扱っていた。ある日、密告からローサ夫婦は逮捕される。さらなる売人の密告、高額な保釈金……警察の要求はまるで恐喝まがいだ。この国で法は誰のことも守ってくれない。ローサたち家族は、したたかに自分たちのやり方で腐敗した警察に立ち向かう。(公式ホームページより引用)

以下ネタバレありです。

汚職まみれの警察

この映画は最初から最後まで、ハンディカムで撮っているような映像です。そのため、フィクションなのにまるでドキュメンタリー映像を見ているような感覚になりました。そのため、マニラのスラム街に漂う混沌とした雰囲気がリアルに伝わってきます。


混沌としたマニラの街並みです。 公式予告より引用

何者かに密告されたローサと夫のネストールは警察所に送還されます。そこで、警察官がローサたちをに自分たちより大物の麻薬密売人の名前を出せば逮捕しないと取引を持ち掛けてきます。その逮捕からお金の取引までの手続きがあまりにもスムーズでした。(あとのシーンでローサたちの逮捕には適正な手続きを踏んでいないことがわかるシーンがあります。)そのため、この正当ではない取引が日常的に行われていることがわかります。


警察のオフィスにいるローサとネストールです。 公式予告より引用

また、売人から得たお金は自分のものにし、臨時ボーナスが入ったかのように警察は豪華な食事を楽しみます。まるでこの警察官たちは暴力団か何かかと錯覚しそうになりました。横暴という言葉かぴったりです。意識がなくなるまで売人に暴力を振るうシーンも強烈でした。もちろんすべての警察官が不正を働いているというわけではありませんが、実話ベースの映画なのでこのような状況がフィリピンには横行しているのです。法律なんてこの閉鎖された空間では何も意味がないのではないかと感じました。

これ映画はドゥテルテ大統領の麻薬取り締まりが行われる前のお話です。そのため、麻薬汚染やそれに伴う警察の汚職は少しは解消されましたが、根本的な解決には至っていません。

フィリピンにおける家族

フィリピン人は、日本人が想像できないほど家族のつながりを大切にします。また、親が子供を大切に思うのは日本と同じですが、フィリピンで深く根付いている子供は親を支えるものという考えが映画の中でもはっきりと描かれていました。保釈金を警察に払うために、家財道具を売り、犬猿の仲の親戚にも頭を下げお金を借り、また売春までしてしまいます。いくら成人していたとしても、親のましてや保釈金を子供が払うなんて日本人の私からしたら驚きでした。

また、親子のつながりだけでなく親戚のつながりも強いのがフィリピンの国民性です。一人が海外に出稼ぎに行ったら一家族ではなく親戚全員を養うなんてフィリピンではよくある話です。この映画の中でも、犬猿の仲の親戚の家に行き頭を下げてお金を貸してほしいとお願いすると、嫌々ながらも家中のお金をかき集めて貸してくれるというシーンがありました。どんなに憎みあっていても親戚というだけで助け合うのが当たりということがわかります。

まとめ

映画によってある国の1人の人物についてじっくり追うことは、全体を見るよりも直観的にのその国のことを知れる良い方法だと思います。『ローサは密告された』などの社会派フィリピン映画からは、アジアならではの力強くもどこか混沌とした雰囲気、またそこで生きる人々や文化をリアルに感じることが出来ます。