DAREDEMO HEROでは、ゴミ山のあるイナヤワン地区大規模火災の支援を行っています。被災者の自立に向けた支援の進捗をご報告いたします。

▶火災の概要と、これまでの支援についてはこちらをご覧ください。
「イナヤワン地区火災被災者支援 」
「被災者の一人一人の自立のために! 」

二転三転する行政の支援計画

DAREDEMO HEROでは、モノやお金での一時的な支援ではなく、被災者の自立に向けた長期的な支援を行っています。被災者の自立にまず必要なものが、住む場所です。
被災者は、発災から3か月がたつ今でも、不自由な避難所での生活を続けています。もともとスクワッターと呼ばれる不法占拠者である彼らは、元の場所に戻ることができません。さらにまとまったお金も持っていないため、自身の力で新しい場所を見つけて移り住むこともできません。

そんな被災者に、行政は「市の土地を用意する」と約束してくれました。私たちも、その地で被災者が自立に向けて進んでいけるようにと、様々な支援を行ってきました。しかし、その移転地がなかなか定まりません。

 
始めに指定された移転地         その後指定された移転地

問題だらけの移転候補地

フィリピンは土地の権利問題が非常に複雑で、常にトラブルが絶えません。火災の起こった場所も、行政が提示する移転候補地も例外ではありません。そのため、すべての手続きが日本では考えられないほど膨大な時間と手間がかかります。


移転地区の確認を何度も行いました

日本であれば、発災後1~2か月で仮設住宅が準備されたり、再建に向けての一時金が支給されます。しかし、ここフィリピンでは発災後3か月がたつ今だに、行政からの支援は何もありません。特に現在フィリピンは統一国政・地方選挙期間中で、ほとんどの行政事業はストップしています。


被災者、バランガイキャプテン、市の担当者とのミーティングを重ねました

なんでも OK OK

フィリピン人の特徴として、分かってなくても「OK」と言ったり、出来なくても「OK」と言ったりすることがよく指摘されます。実際に今回のプロジェクトにおいても、何度も「OK OK」という言葉を聞きましたが、実際に何も進みません。

もうひとつよく聞く言葉が「Tomorrow」です。お店に行って欲しい商品やメニューがない時、店員さんに聞いてみると、たいてい「Not today, Maybe tomorrow(今日はないけど明日にはあると思うよ)」という答えが返ってきます。しかし、翌日行っても同じ答えです。

争いごとを好まず、相手に悲しい思いをさせたくない、一時的でも相手に喜んでほしいというフィリピン流のホスピタリティーなのですが、これではプロジェクトは進みません。本音で話し合うには、長い時間と強い信頼関係が必要です。

誰のためのプロジェクトなのか

このような支援活動をしていく中で、常に念頭に置かなければいけないことが「誰のためのプロジェクトなのか」ということです。悲しいことに、まれに被災者や受益者が取り残されてしまうプロジェクトがあります。
プロジェクトを運営する側が、被災者に寄り添い、何に困って何を必要としているのかを常に把握する必要があります。DAREDEMO HEROでは被災者一人一人の話に耳を傾け、プロジェクトを進めています。

ジェリカ


笑顔が素敵なジェリカ(右)

ジェリカは、現在15歳の高校生です。6人兄弟の長女である彼女は、将来看護師になることを夢見て勉強に励んでいました。しかし、今回の火災で制服や学用品など、学校に通うための全てのものが燃えてしまいました。

両親は、ゴミ山からリサイクル可能なペットボトルなどを集めて、それを売って生計を立てています。1キロのペットボトルを集めて、やっと10ペソ(約21円)を得ることができます。この収入で子ども2人を含む8人の家族が生活しなければなりません。そのためサイドビジネスとして、豚の餌の販売も行っていました。しかし、現在はその仕事もできないため、一家が飢えない最低限の収入しか得ることができません。

ジェリカの心配事は、新学期に学校に復帰できるかどうかです。発災直後は学校も状況を理解し、私服での登校や文具がなくても授業を受けることを許可してくれましたが、6月から始まる新学期には、再度制服と文具を揃える必要があります。それは、ジェリカ1人ではなく、下の兄弟も同じです。しかし、今の一家の状況では、1人分の制服を買うこともできません。

フィリピンで学校をドロップアウトしてしまうケースのほとんどがこのような理由によるものです。特に長男長女は下の兄弟のために、学校に行くことを諦めて親の手伝いや仕事を始めることが多いです。ジェリカは、看護師になる夢を実現するために学校に通い続けたいのですが、今のままではその夢を実現することは非常に難しいです。


この小さなスペースに家族8人で暮らしています

変わりゆく状況の中で一番の策を見出す

フィリピンで支援活動をしていくうえで、ひとつの手段にこだわらず、状況にあった手段を見出すことが大切です。最終的なゴールが定まっていれば、そこにたどり着くための道は幾通りもあります。

被災者の多くが、現在の避難所での生活から1日も早く抜け出し、新たなスタートを切りたいと願っています。行政の動きが定まらない中で、新しい生活を始めるためには、自らの力で新天地を見つけ出し、生活を再建していく必要があります。

全ての被災者が、生計を立てるためにゴミ山を離れることはできません。被災者同士が力を合わせ、生活の再建に取り組めるよう、私たちも一緒に新たな居住地区を探していきます。そして、1日も早く火災前の生活に戻れるよう、家屋の再建・養豚の再開を支援してきます。

被災地支援から思うこと

今回のように被災地の支援や、最貧困地区の支援を行っていると、改めて目先の支援だけでは人々の生活が改善されないことを痛感します。すべての子どもたちに学ぶ権利と、すべての労働者に最低限の賃金が保証されなければ、彼らのような最貧困層の人権は守られません。
さらに行政だけではなく、貧困層の一人一人も意識を変えていかなければ、彼らの生活の質が向上していくことはありません。

DAREDEMO HEROでは、目の前で困窮する人々を支援すると同時に、この国を根本から変えてくれる未来のリーダーを育成することに力を入れていきます。それがこの国で貧困に苦しむ何万人もの人々を救える唯一の方法だと信じています。