7,000以上の島々に1億903万人が暮らすフィリピンは、5.6%という急速な経済成長を遂げています。その一方、発展から取り残された貧困層が存在します。
フィリピンの現状を知り、その課題と問題を探っていきます。
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フィリピンの貧困率
フィリピン統計局(PSA)は、2023年の家計収支調査の予備結果に基づく2023年度の公式貧困統計で貧困率を10.9%と発表しました。2021年時点での貧困率は約18.1%であり、大幅に改善されているように見えますが、統計に反映されづらい農村部や離島での貧困率が非常に高く、地域間での格差が顕著です。
2023年には、5人家族が最低限の食料および非食料の基本的ニーズを満たすために、月に少なくとも13,873ペソ(約36,000円)が必要だと発表されています。
なぜフィリピンは貧困なのか?
フィリピンの貧困問題は、様々な要因が絡み合っています。そのため、解決には多面的なアプローチが必要になります。ここでは主な貧困の原因をあげていきます。
縮まらない経済格差
フィリピンの経済は、情報技術やアウトソーシング、観光業の成長により近年高い成長率を記録していますが、経済的な恩恵は均等に分配されていません。特に農村部や離島では、経済成長の恩恵が届かず、都市部との格差が拡大しています。
主要都市では、高級住宅地やビジネス地区があり、そこには豪華な家々が並び、多くの裕福な人々が住んでいます。一方で、都市の周辺部やスラム地域には、スラムや不法占拠地域が多くみられ、生活水準が非常に低い人々が住んでいます。
低賃金と不安定な雇用
多くのフィリピン人が農業や漁業、非正規雇用などの低賃金で不安定な仕事に従事しており、これが貧困の主要な要因となっています。都市部では、高度なスキルを持つ人々に対する雇用機会が多い一方で、学歴やスキルのない人々には、不安定かつ低賃金での雇用形態しか選択肢がありません。
労働市場の不安定さや職業訓練の不足が、雇用機会を制限し、貧困からの脱却を困難にしています。
教育へのアクセスの不足
フィリピンの教育システムには様々な課題があり、特に私立との教育の格差、教室及び教員の不足、中退率の高さが深刻です。そもそも、経済的な理由や地理的な理由で、学校に通うことすらできない子どもたちもいます。
十分な教育を受けることができず、英語が話せなかったり、中等及び高等教育を終了できなかった子どもたちは、高賃金で安定した職業に就くことは難しく、不安定かつ低賃金での雇用形態にしか就くことができません。そのため、その次の世代にも十分な教育を受けさせることができず、貧困が連鎖されていきます。
現在、フィリピンの大学進学率は30%から40%とされていますが、地域間また家庭の経済状況によって大きく異なります。富裕層の49%が大学に進学している一方で、貧困層は17%にとどまっており、大学の中退率は34%にも上ります。
データ参照:Trinity University of Asia
頻発する自然災害や大規模火災
フィリピンで近年、最も深刻な自然災害は台風です。フィリピンは台風の通り道に位置しており、毎年約20回以上の台風がフィリピンを襲います。台風による被害は、家屋の破壊、農作物の損失、インフラの損傷など多岐にわたります。台風による洪水や土砂崩れは、特に貧困層に大きな影響を与えます。
フィリピンの都市部、特にスラム地域や密集した住宅地では、頻繁に大規模火災が発生します。火災の原因としては、電気配線の不良、ガス漏れ、違法な焚き火などがあります。大規模火災は多くの家屋を焼失させ、多くの人々が住居を失うことになります。全てを失った貧困層が、自力で生活を立て直すことは非常に難しく、さらなる貧困を招いています。
解決に向けたDAREDEMO HEROの取り組み
これら複雑に入り組んだ貧困問題に対して、貧困層の自助努力や政府の取り組みだけでは解決は難しく、国際機関やNGOの支援が必要とされています。様々なアプローチがある中で、DAREDEMO HEROは、教育の力でフィリピンの貧困問題を根本から解決するための様々な取り組みを行っています。
教育支援
DAREDEMO HEROは、フィリピンの貧困層の子どもたちの中から、やる気と志、さらに能力の高い子どもたちを選抜して、小学3年生から大学卒業までの徹底的な教育支援を提供することで、将来、この国の社会問題を解決できるリーダーを育成しています。
さらに、ゴミ山や墓地に住む最貧困層の子どもたちにも教育の機会を提供し、将来、手に職を付けて自活ができるように支援しています。
地域支援
教育支援の成果が見えるまでには、長い年月がかかります。さらに大学までの支援を行うDAREDEMO HEROの教育支援は、費用もかさむため、支援ができる子どもたちの数に限りがあります。
「保護者が子どもたちに必要な教育を提供できる」ことが、本来あるべき姿です。その実現のために、保護者のライフスキル向上、所得向上、さらに地域力の向上を目指し、様々な自立支援活動を行っています。