その日暮らしで、ギリギリの状態で生きている貧困層の生活が、少しでも改善できるように、DAREDEMO HEROで貧困層300世帯を対象にライフスキル向上事業を行っています。
目次
月の収支が分からない貧困層
これまでに、たくさんの貧困層に聞き取り調査を行ってきましたが、いつも貧困層が答えに困ってしまう質問があります。
「月収はいくらですか?」
日本であれば、通常自分の月収を把握しているものですが、いわゆるその日暮らしをしている貧困層は、ひと月で合計いくら収入があったかを把握することは容易ではありません。その日稼いだお金で、その日必要な物を買い、緊急でまとまったお金が必要な場合は、誰かから借金をするのが貧困層の一般的なお金の管理方法です。
まずは自分を知ることから始まる
この事業では、金銭管理だけでなく感情のコントロール方法も伝えていきます。お金がなく、お腹が空いていたり、必要なものが購入できないと、人間はストレスが溜まります。ストレスは適度に発散していかなければなりませんが、感情の言語化が苦手な貧困層や、ストレスの解消方法が分からない貧困層は、感情的をコントロールできなくなってしまうことがあります。また、安易にお酒や薬物に逃げてしまう危険性もあります。自身の感情を理解し、うまく付き合えるようになることが、安定した生活を送るためには非常に重要です。
さらに毎月の収支を理解し、自分が何にお金を使っているのか、無駄な出費がないかなどを理解することで、生活の立て直しの可能性が見えてきます。
教育の重要性を理解すること
貧困層の多くが、その日生きることに必死で、新しく知識や技術を身に着ける余裕がありません。さらに、そもそも基礎教育を受けていない貧困層にとっては、教育の重要性を理解することは難しく、楽な道を選んでしまいがちです。そんな貧困層に向けて、DAREDEMO HEROではこれまでに地道に教育の重要性を伝えてきました。
当初は「何かもらえるから」とセミナーを受講していた貧困層も、1年間様々な知識を付けることで、それらの知識がいかに人生を豊かにし、家族を守ることにつながるかを実感してくれています。今では、セミナーの内容を一生懸命にメモに取る参加者の姿も見られるようになりました。
フィリピン人が大好きな「スモールビジネス」「マイクロビジネス」
この事業では、最終的に貧困層が簡単なビジネスについて理解できることを目標にしています。
なぜ、貧困層がビジネス?と思うかもしれませんが、フィリピンの貧困層の中では「スモールビジネス」や「マイクロビジネス」と呼ばれる、小規模ビジネスがとても人気です。フィリピンでは高等教育を受けていない場合、正社員として雇用されることは非常に難しく、そのため自分たちで収益を得る方法を考えます。
そのため、例えば1万円程度の臨時収入が入ると、安易に自分でビジネス(小さなお店など)を始めようとします。しかし、そもそも「収益」という概念を理解していないため、収入につながることなく、元金もなくなってしまうことがよくあります。
フィリピンの貧困層向け「ビジネスプランコンテスト」
なんと、この事業では貧困層向けに「ビジネスプランコンテスト」を開催します。優勝者には、約2万円の開業資金を提供し、実際に計画を立てたビジネスを行い、経過の観察も行います。
「2万円でビジネス?」と思うかもしれませんが、貧困層の多くが月収1万円前後で生活しています。彼らにとって2万円というのは非常に大きな金額です。学び続けるためには、モチベーションが重要です。さらに、DAREDEMO HEROのセミナーで学び、賞金で起業をした貧困層がビジネスに成功すれば、それが地域の多くの人々にとってのモチベーションにつながります。
私たちのような小さな団体にできることは限られていますが、少しでも成功例を作り、貧困層に学ぶ意欲や可能性を提供していくことが、貧困問題の根本解決には必要だと考えています。
社会保障の理解
フィリピンにも、保険や年金制度があります。しかし、多くの貧困層は「掛金が払えない」「制度を理解していない」などの理由で、加入していません。日々の暮らしに精一杯の貧困層にとって、定額でも掛金を支払い続けることは容易なことではありません。しかし、突然の病気や事故などにあってしまった場合、社会保障に加入していることによって、掛金以上の保障が受けることができます。
まずは、社会保障制度を十分に理解し、自分たちにできる加入方法を見つけていく必要があります。当事業では、外部講師によるセミナーに加え、受益者の社会保障加入のサポートも行っています。
この事業は、公益社団法人大阪コミュニティー財団ストリートチルドレン等救済基金の助成を受けて実施しています。