2025年10月、セブ市の山岳地域TAPTAPにて、私たちの新たな挑戦が幕を開けました。
農業による収入向上を目指すこのプロジェクトの開始を祝し、現地で盛大なキックオフセレモニーを開催しました。
式典には、在セブ日本国総領事館の松尾総領事ご夫妻、セブ日本人会の藤岡会長、JICA Philippinesから大須賀様、さらにセブ市農業課のJoelito Baclayon課長など、多くのご来賓にもご出席いただきました。地域の農家の皆さんと共に笑顔があふれる、とても温かい時間となりました。
農家100世帯と歩む、3年間の「共創」の旅
本プロジェクトは、セブ市山岳地域TAPTAPに住む100世帯の零細農家の皆さんと共に、「持続可能で誇りある農業」を実現する3年間の取り組みです。「支援する/される」の関係ではなく、「共に学び、共に成長し、共に地域を変えていく」という姿勢で進めていきます。
対象農家の皆さんには、以下のような多面的な研修と実践の機会を用意しています:
- 有機農業の基礎と実践(パートナー:CAFEi )
 - 種の自家採取とシードライブラリー構築(パートナー:Global Seed Savers)
 - 土壌改良と適正作物の選定
 - 農産物の市場調査と販売スキル向上
 
初年度は100世帯を対象にスタートしますが、2年目には50世帯、3年目にはより意欲のある20世帯へと対象を絞り、確実な成功事例の構築を目指します。これは「切り捨て」ではなく、地域全体のモデルとなる成功農家を育てるための戦略的なステップです。


モデルファームが始動、TAPTAPに希望の種をまく
プロジェクトの中核を担うのが、TAPTAPのモデルファームです。現在、農業インターン禅が管理人となり、0.2ヘクタールの土地を有機農法で再生させる取り組みが始まっています。
このモデルファームは、以下の役割を担っています:
- 研修の実習フィールドとしての活用
 - 土壌改良や水資源管理の実験
 - 地域内での「見える化された成功例」の発信地
 
土壌は粘土質で有機物含有量も少なく、水資源の確保も困難ですが、禅は日々汗を流しながら、農業に希望を取り戻す挑戦を続けています。将来的には、このモデルファームで得られたノウハウを農家全体に共有し、地域全体の生産性向上と持続可能な農業の普及につなげていく予定です。


TAPTAPをセブで一番豊かで幸せな農業地域に
TAPTAPの農家の皆さんは、災害や物資不足に苦しみながらも、日々前を向いて生きてきました。そんな皆さんが、自分たちの力で未来を切り拓く第一歩を踏み出したのが、今回のプロジェクトです。この3年間の中で私たちは、
- TAPTAP独自の農業カレンダー
 - 農業技術の指導マニュアル
 
という2つの「地域の財産」を残す予定です。
それは一過性の支援ではなく、地域の未来に根を張り、次世代に希望をつなぐ「知恵のバトン」です。この事業をひとつの成功事例として、周辺の地域にも、この手法を広げることで、セブ市全体の農家の収入が向上していくことを目指していきます。


これからも、共に未来をつくる仲間として
このプロジェクトは、私たち日本側の支援だけでは成り立ちません。
地域住民の主体的な参加、行政の理解と協力、そしてパートナー団体の専門的な知見、すべてが合わさってはじめて「成功」へとつながります。
この土地で、農業に笑顔が戻り、子どもたちが夢を語り、家族が誇りを持って暮らせる未来をつくるために、これからも一歩ずつ、着実に歩んでいきます。



					
