2025年11月、セブ市山岳地域TAPTAPにて、農家の皆さんが自ら学び、未来の農業を切り拓くための「基礎農業セミナー」が開催されました。会場となったBrgy. Taptap Gymには、各地域のリーダーとメンバーが集まり、地域の新たな挑戦が静かに、しかし力強く始まりました。
地域の未来をつくる最初の一歩
本プロジェクトは、セブ市山岳地域TAPTAPに住む100世帯の零細農家の皆さんと共に、農家の収入向上を目的としてJICA草の根事業と共同で実施する3年間の取り組みです。参加者は各地域のリーダーとそのメンバーで構成され、地域の中心人物が学ぶことで、知識や技術を家庭やコミュニティに広め、後の実践を導いています。
今回のセミナーは、TAPTAPの農業を持続的に発展させるための最初の一歩です。まずはリーダー向け研修を行い、さまざまな技法を紹介。その中から現地で成果が上がりそうな方法を選定しました。その後、メンバー向け研修で実際に技法を実践し、地域全体に知識を広げる流れで進めました。


リーダー向け研修
地域を導くための“基礎理解と指導準備”の時間
1回目の研修は各地域のリーダーを対象に実施しました。
内容そのものは後のメンバー研修と同じですが、
リーダー研修では以下の点が異なります。
● ① 伝える側としての理解を深める研修
リーダーたちは講師の説明をただ聞くだけでなく、
「どうすれば地域のメンバーが理解しやすいか」
を意識しながら参加しました。


メンバー向け研修
リーダーが支え、地域が一つになって学ぶ場
2回目の研修はリーダー+各地域メンバーを対象に実施しました。
講座内容はリーダー研修と同じですが、学びの進み方に違いがあります。
● ① リーダーが横で支える“協働型”の学び
リーダーが各グループで補助しながら進行したことで、
参加者全員が安心して実習に取り組むことができました。
● ② 家庭で再現するための理解促進
メンバーにとって初めての内容であっても、
実習を通して「自宅でもできる方法」をしっかり学ぶことができました。


有機農業と土づくりの基礎講座
TAPTAPの農家の多くは従来の栽培方法に頼ってきたため、土壌の健康管理や作物の配置、種子管理など、持続可能な農業に必要な基礎知識が十分ではありませんでした。
そこで今回は、自宅や農地で有機農業を実践できる具体的な技術と知識を習得することを目的として、以下の講座を実施しました:
- 土床の作り方
- 土壌の健康管理
- 等高線農法の利点
- 地滑り防止のための土地管理
- 種子の保存方法と適切な株間の取り方
農家たちは講座を通じてこれらの技術を学び、今後は土壌改良や作物配置、種子管理に活かすことで、作物の健全な生育や収量向上、安定した農業経営につなげることが期待されます。

有機資材づくりの実習
学んだ知識をその場で実践につなげるため、午後は有機資材づくりの実習を行いました。参加者は各地域ごとに分かれ、リーダーが中心となって各工程を確認しながら、実際に手を動かして実習しました。
今回作成した有機資材は以下の5種類です:
- CalPhos(卵殻と酢を使用/1か月発酵)
- FAA(魚アミノ酸)(魚とモラセスを使用/3週間)
- FPJ(発酵植物エキス)(草とモラセスを使用/2週間)
- OHN(東洋ハーブエキス)(にんにく・しょうがを使用し、酢を加えて10日)
- GADAM(草・家庭ごみ、または魚を使った資材/OHNと同様の工程)
どの資材も身近な材料で作れるため、参加者は家庭でも簡単に再現できる技術として学ぶことができました。従来の農法では購入が必要だった肥料や資材を自分たちで作れるようになることは、コスト削減だけでなく、安定した農業経営にもつながります。


物資の配布
TAPTAPの多くの農家は、研修で知識を得ても、必要な道具をそろえるための資金がなく、すぐに実践へ移せないという課題を抱えていました。特に有機農法では、堆肥づくりに欠かせないドラム缶がないと、学んだ技術を家庭で続けることが難しくなります。
そこで私たちは、まず小さな一歩でも確実に踏み出せるよう、ドラム缶を配布しました。これにより有機資材を作ることが可能となり、家庭での農業再開の大きな助けになります。
さらに、今月の台風で多くの農家が育ててきた作物を失ったため、緊急支援として種も配布しました。この小さな支援が、家庭での農業再開の大きな一歩となります。

小さな種から大きな変化へ
地域に根づく“学びの種”が、確かに芽を出し始めました。
今回のセミナーは、TAPTAPの農家の皆さんにとって、未来へ続く道のりの最初の一歩です。
これからも、地域のリーダー、JICA、そして私たちDAREDEMO HEROが力を合わせ、農業に誇りと笑顔が戻るTAPTAPを目指して歩み続けます。
小さな種は、やがて大きな変化を生みます。その変化を、地域のみなさんと共に育てていきます。



