セブ島と聞くと、青い海、リゾート、そして英語留学。
そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。けれども、今、セブ島の山岳地帯で、新しい学びの可能性が広がりつつあります。それは、ただの観光でも、座学の英語学習でもない。
「本当に大切なことを、肌で感じる学び」
目次
なぜ、今、セブで「農業」なのか?
セブの農家の方々は、朝から晩まで重労働をこなし、急斜面の畑を人力で耕し、何十キロもの野菜を背負って運んでいます。それでも、手元に残る収入は月に1万円程度。子どもを大学どころか、小学校にも通わせられない家庭もあります。
これほど努力しているのに報われない。それが、この国の農村の現実です。そして、そこにこそ、この国が抱えるあらゆる課題——教育、医療、貧困、格差、環境——の縮図があるように感じました。


有機農業×国際協力 新たな挑戦
DAREDEMO HEROでは昨年、JICA(国際協力機構)による草の根技術協力事業の採択を受けることができました。私たちは、セブ市の山岳地域TAPTAPにおいて、零細農家の農業収入向上を目指した支援を本格的にスタートします。
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事業開始に先駆けて、運命のような出会いがありました。セブに語学留学に来ていた日本の若者、その名も「禅」。なんと、彼は日本で有機農業のNPOに所属し、実地経験を積んできた人物でした。セブの農村を目の当たりにして、「ここで農業に挑戦したい」と強く願うようになったと話してくれました。
話し合いを重ねた末、彼は一度帰国し、再び長期でセブに戻ってくることを決意しました。それ以来、禅はインターンとして、農業支援の現場を牽引しています。


Casa Japonesaから始まる新たな未来
かつて、日本とフィリピンの友情の証として建てられた「Casa Japonesa(日本人の家)」。長らく使われていなかったこの家が、今、再び命を吹き込まれ、ただの住居ではなく、希望の基地として動き始めています。
農業インターンとしてセブに滞在している禅の住居であると同時に、この家は今、DAREDEMO HEROの奨学生たちの「学びの場」として活用されています。ここでは、子どもたちが土に触れ、農家の現実を知り、自分の手で育てることの意味を体験しながら、「努力が報われる社会」とは何かを考える貴重な時間を過ごしています。
ただ野菜を育てるだけではありません。最近は、新たにコーヒーの木も植え始めました。時間をかけてゆっくりと育つコーヒーの木は、まるでこの地に根を張る子どもたちの成長を象徴しているようです。5年、10年後、ここで育った豆でコーヒーを淹れながら、「あの時、あの畑で始まったんだ」と語り合える日が来ることを思い描きながら、一つひとつの苗を丁寧に植えています。
Casa Japonesaには、子どもたちの夢、禅の挑戦、私たちスタッフの想い、そして支援者の皆さまの願いが詰まっています。この場所に集うすべての人の「こうなったらいいな」という想いが、少しずつ形になっていく。それこそが、この家が希望の基地と呼ばれるゆえんです。
山奥の静かな土地に建つ一軒家。その場所から、たくさんの小さな希望の芽が、静かに、でも確かに動き出しています。


留学生に伝えたい「英語のその先にある学び」
そして今、この農業支援の現場が、留学生にとっての「生きた学びの場」となろうとしています。私たちは、フィリピン・セブ島にある語学学校のU-GAKU(ユーガク)と連携し、禅の案内による農業体験ツアーを実施することになりました。U-GAKU(ユーガク)はセブだけでなく国内留学(沖縄・ニセコ)も行なっている他にはない語学学校です。
そんなU-GAKU(ユーガク)と共に、英語を学ぶだけでなく、「英語を使って何を伝え、どんな世界を築くか」を体感できる機会を提供しています。現地の農家と直接会話し、その思いや悩みを聞く。重労働を手伝いながら、自然と共に生きる人々の生活を理解する。そのすべてが、自分自身を見つめ直す貴重な時間になるはずです。
セブの山岳地域で出会う人々は、素朴で温かく、たとえ困難な状況でも、笑顔を忘れません。そこには、日本の生活では得られない豊かさがあります。目に見えるものだけが「豊かさ」ではないと気づくことができるのです。


希望の循環をつくる旅へ
このツアーで私たちが目指すのは、「まずは知ってもらうこと」。知ることは、変化の第一歩です。そして、関心を持った人が次の行動を生み、新しい希望の循環が広がっていく——そんな未来を描いています。
セブの農村に根を張り、農家と共に歩む禅。彼の姿勢に触れることで、多くの留学生が「自分も何かを始めてみたい」と思えるはずです。英語というツールを使い、自分の想いや願いをかたちにしていく。その最初のステップとして、この農業体験ツアーはきっと、大きな意味を持つはずです。


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フィリピンにも広がる有機農業のうねり
2025年6月、セブ州政府は「セブ有機農業推進条例(Cebu Organic Agriculture Development Ordinance)」を可決。化学物質に頼らない持続可能な農業を支援する制度が、法的に整備されました。
この条例では、普及活動・研修・有機種子の提供・補助金・マーケティング支援などが行われるほか、違反に対する罰則も定められています。まさに、私たちの取り組みと重なる方向性です。
今後、行政・農家・市民・民間企業が連携し、セブ全体で有機農業が推進されていくことが期待されています。