DAREDEMO HEROでは貧困層が「自分の力で生き抜くための力」「正しい選択をする力」を付けるための様々な自立支援活動を行っています。
その一つとして、関西NGO協議会様と真如苑様のご支援を受けて行っている美容師育成事業があります。
プロジェクト概要
DAREDEMO HEROでは、自立支援の一環として美容師育成事業を行っています。
私たちが活動する4つの地域――Inayawan、Carreta、Lapulapu、Taptap――には、多くの人々が日々の生活で精一杯の状況があります。教育や職業訓練を受ける機会も限られており、「技術を身につけて収入を得る」という選択肢を持てないまま大人になる若者も少なくありません。
そこで、地域で選ばれたトレーナーが住民に聞き取りを行い、
本気で技術を身につけたい最貧困層の方を対象に受益者を選定し、事業が開始いたしました。
1期生の活躍
1期生は2024年4月にプログラムを開始し、2025年3月に無事修了しました。約1年間、基礎的なカット技術だけでなく、お客様とのコミュニケーション、衛生管理、道具の扱いなど、美容師として働くために必要な基礎をじっくり学びました。最初はハサミを持つ手がぎこちない参加者も多くいましたが、実践を重ねるにつれて少しずつ表情が変わり、最後の頃には落ち着いて工程を進められるようになっていきました。
修了後、すでに何名かが地域の中で美容サービスを始めています。すぐにサロンで働くという選択肢は難しい環境ですが、自宅の一角を使って、近所の人の髪を切るところから一歩を踏み出しました。「喜んでもらえるのが嬉しい」「せっかく学んだから活かしたい」と話す人もおり、学びが生活に溶け込んでいく様子が伝わってきます。
1人のカット料金は約50ペソ(約130円)。決して大きな金額ではありませんが、日々の食費や子どもの学用品の購入など、生活の一部を支えるには十分な収入となっています。そして何より、「自分の手でお金を生み出せた」という経験は、大きな自信につながっています。講習が終わっても、その後の暮らしのなかで技術が確かに力を発揮し始めています。
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タプタプで農業をしながら講習に参加していたジンキリートさんも、その一人です。現在は DAREDEMO HERO Mountain View Barbershop の店主としてカットを提供し、農業と両立しながら副収入として月に約2,500ペソを得られるようになりました。「新しい働き方が増えたことで、家族を支える方法にも選択肢が増えた」と話しており、美容の技術が生活に前向きな変化をもたらしている様子が伝わってきます。
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2期生:第1回トレーニング
先日、2期生のプログラムをスタートし、その最初の講習としてヘアカットの基礎トレーニングを行いました。この日は、日本で美容室を経営する美容師の方を講師として迎え、オフィスに集まった参加者たちは、ヘアカットの全体の流れを実践的に学びました。講習ではまず、地域のトレーナーがモデルの髪を切り、その様子を見ながら講師の方が細かいポイントをアドバイスしていく形式で進み、技術の習得だけでなく、なぜこの工程が大切なのかを理解しながら学べる時間になりました。
この日の講習で特に重視されたのは、技術力そのもの以上に「お客様がどのような仕上がりを望んでいるのかを丁寧に聞く姿勢」が美容師として欠かせないということでした。中でも前髪の切り方が全体の印象を大きく左右することや、最終的な仕上げをどれだけ魅力的に見せられるかが、お客様の満足度に直結するというプロならではの視点は、参加者たちにとって新鮮な学びだったようです。
また、良い道具を使うことが作業を助け、仕上がりの質を高めるという話に加え、「カットだけでなく、ヘアセットだけでも収入を得ることができる」という働き方の広がりについても紹介されました。特別な日のセットはもちろん、地域の中でも簡単なスタイリングの需要があることを知り、参加者たちはより多くの可能性を感じている様子でした。
講習の最後には、講師の方から実際に使用しているハサミなどの美容道具をご提供いただき、参加者の表情はさらに明るくなりました。「これで練習ができる」「すぐに試してみたい」といった声が聞かれ、学んだ技術を自分の生活の中でどのように生かしていくかが、より具体的に描けるようになったようです。こうして2期生の第1回講習は、技術習得の場であると同時に、新しい働き方の可能性を実感する力強いスタートとなりました。


謝辞
当事業は、関西NGO協議会様と真如苑様とDONNA Cebu Montebello Japanese Hair Eyelash Nail Salon様のご協力の元、多数の日本人美容師ボランティアの方々にご協力いただき実施しております。貧困層の人々が美容師を目指すにあたって必要なハサミなどの道具は全て、ボランティアの方々からの寄付によるものです。
この場を借りて深くお礼を申し上げます。


