「世界第3位の英語大国フィリピン」よく耳にするキャッチコピーです。フィリピン人は生まれながらに英語が話せるのでしょうか??
フィリピン人の日常会話は英語?
英語が公用語と聞くと、ごく自然にすべての国民が英語を日常的に話しているように想像しがちです。しかし、それは間違いです。
実際には、セブの人々は「ビサヤ語」を通常使って生活しています。子ども同士、子どもとその家族で英語を話している姿を見ることはほとんどありません。HERO’S HOUSEでは、子どもたちに極力英語で話をするように指導していますが、算数の授業など「特にしっかり理解してほしい時」には、あえてビサヤ語で説明をします。ここからも分かるように、子どもたちにとって「ビサヤ語」が母国語で、英語はあくまでも「勉強して覚える一つの言語」なのです。
高級なショッピングモールなどでは、家族みんながきれいな英語を当たり前のように話している光景を見ることがあります。そういった子どもたちは、授業料の高い私立の学校や、インターナショナルスクールに通っています。そうでなければ、日常から英語を苦もなく話す子どもにはなれないのです。
貧困層の英語力
とは言っても「英語が公用語」と言われるからには、国民すべてが英語が話せて当たり前と思うかもしれません。しかし、それも間違いです。
子どもたちの親の中には、英語が全く話せない親もいます。ただし、ビサヤ語の中には英語をそのまま使っている単語も多いため、日本人の「全く話せない」人よりは、少しは通じる程度です。そういった大人たちの多くは、貧困が故に小学校も途中でドロップアウト(中退)してしまった人たちです。そういった親を持つ子どもも、学校に行くまで英語に接する機会がないため、英語レベルで学校入学時から既に遅れを取ってしまいます。
公立学校での英語教育
フィリピンの公立学校では、英語教育に力を入れています。その証拠に、高学年になると数学が理科など主要な教科の授業が「英語のみ」で進められます。そのため、子どもたちは必要に迫られ英語を習得していきます。
しかし、低学年で英語の基礎についていけなかった子供たちは、そのまま取り残され、英語だけでなくほかの教科も理解できないまま落ちこぼれて行ってしまいます。そうならないためにも、就学前の英語の基礎が人生を左右するといっていいほどです。家族が英語を話せるか話せないかで、人生そのものが大きく変わってきてしまいます。
更に学年が上がり、高校、大学になれば英語の比重はさらに大きくなり、大学の授業ではネイティブ並みの英語力が求められます。そして、英語が話せれば企業への就職、海外での仕事、英語の先生、コールセンターなど、様々な仕事の選択肢があります。半面、英語が話せなければ、低賃金の仕事にしか付くことができません。
貧困からの脱却には英語が必須
残念なことに、現在のフィリピンでは
- 貧困層=英語が苦手
- 富裕層=英語が日常語
この図式が完全に出来上がってしまっています。
そのため、貧困層から脱却するためには「英語」が欠かせないのです。そのため、私たちは子どもたちに毎日英語の日記を書かせたり、EOP(English only policy)を作ったりと、厳しく英語の指導を行っています。
「フィリピン人だから、英語が話せて当たり前」と思っている方に、フィリピン人が当たり前に英語が話せるまでの苦労をぜひ知っていただきたいです。特に、家族や周囲が英語を話せない環境にいる、貧困層の子どもたちにとっては、英語が話せることは決して当たり前のことではありません。
子どもたちは、貧困からの脱却のために、日々一生懸命英語を勉強しています。