貧困の原因の一つである土地の所有権。そこには、根深い問題が潜んでいます。

大土地所有制度

フィリピンの貧困率は都市よりも農村の方が高くなっており、貧しい人々は地主の土地で小作人として農業を行っています。スペイン統治期に大土地所有制度が形成され、同時に政治的支配構造もそれに合わせて構成され、現在でもその形態が残っています。

政府による農地改革

もちろん、政府もこの状況をただ眺めているだけではありません。過去の政権の多くが農地改革を行っています。独裁政権であったマルコス政権も地主に収める小作料を一定の額に規定するなどの農地改革を行いました。その後、無血革命である「ピープル・パワー」を経て大統領となったコラソン・アキノは、自らが所有する大規模農園も農地改革の対象とするなど、農地改革に本格的に取り組もうとしました。しかし、議員の多くが大土地所有者であることから反発を受け、思い通りには進みませんでした。これまで何度も挑まれた農地改革ですが、なかなか思うような結果が出ていません。現ドゥテルテ政権も農地改革プログラムを行っています。


ピープル・パワーについてはこちらをご覧ください▶フィリピンが独裁に立ち向かった日~エドゥサ革命~

不法居住者

スクワッターという言葉をご存知でしょうか?遊閑地に許可なく居住する不法居住者のことです。都市では彼らが集まりスラム(インフラなどが整っていなく、不衛生なことが多い居住地)が形成されます。もともとは農村から職を求めて一時的に都市へと移り住む人々がほとんどでした。しかし、彼らが定住を決意し故郷から家族を呼び寄せたり、農村にいた親戚が都市に住む彼らを頼って居候したりすることでコミュニティが形成されていきます。現在では、数世代にわたってそこに居住しているという例も少なくありません。

強制立ち退きの恐怖

ただ、コミュニティが形成されたとしても彼らは不法居住者であるため、常に立ち退きの不安がつきまといます。強制立ち退きの例としては、ショッピングモール建設などの都市開発に土地を使用する場合などです。
法律では地主が立ち退きを勧告する際は、勧告から立ち退きまで最低一か月の猶予を設けることが義務付けられています。しかし、それが守られないこともあり、猶予が与えられないまま強制立ち退きを言い渡されることもあります。また、再居住地を与えられることもありますが、現居住地から離れた地域であることが多いです。そのため、再居住地に移ってしまうと今の仕事が続けられなくなるという問題が発生します。再居住地に移転してすぐに新しい仕事が見つかるとは限りません。経済的に余裕がない生活を送る貧困層にとって、収入が少しでも途切れてしまうのは大きな問題です。
立ち退き先の実態については、後日ブログでお伝えします。

放火犯の正体

不法居住者が住む地域では火災が多々発生します。原因は様々ですが、貧しいがゆえに盗電を行う人も多く、盗電部分がショートして火災に繋がることもあります。また、貧困層の家は木造が多いため火が広まりやすく、大火災となります。
様々な火災の原因の中には、放火もあります。なんと、地主が放火を行うこともあります。不法居住者の人々が勧告を受けてもなかなか退去しないため放火を行い、居住者の避難後にフェンスなどで土地を囲むことで再居住できないようにするというものです。


盗電部分の様子

まとめ

フィリピンは上記のような土地に関する問題が多く存在します。「大土地所有制度」の部分で述べたように、政治家や有力者に大土地所有者が多いため、彼らに有利なように土地政策が決められる傾向があります。土地の所有権を持たない貧困層の人々にも裨益するようにするためには、そのような政策決定の構造自体を変化しなければなりません。

参考:太田和宏(2018)「貧困の社会構造分析-なぜフィリピンは貧困を克服できないのか-」,法律文化社