感染者が3万人を超えた今もなお、新規感染者が増加するフィリピン。今回は浮かび上がる感染者増加の1つの原因についてお伝えします。

政府がある職業に5万人を雇う計画

政府は「コンタクトトレーサー」という職業に5万人を雇用する計画を立てています。この職業は、新型コロナウィルス感染症に感染した人と濃厚接触者した人を追跡するための職業です。
今回、なぜこの職業の必要性が高まっているのでしょうか?

現在起きている感染拡大の大きな原因のひとつが「濃厚接触者がどこにいるのか分からない」ということです。感染者と関わった人々がどこに住んでいて、どんな移動をし、誰と会ったのかなどの確認ができていません。それらが分からない限り、的確な感染予防措置がとれないのです。

そのため、コンタクトトレーサーという職業は、新型コロナウィルス感染症の拡大防止の為、最も重要な職業の1つとして、注目されています。
しかし、このコンタクトトレーサーが5万人雇用できたとしても、1つの問題に直面してしまいます。

貧困層だからこその問題

その問題というのが「接触者の名前が分かったとしても、その人を探し出すことができない」ということです。なぜなら、貧困層の人々が暮らしている地区には細かい住所がないケースがほとんどです。そもそも居住地区として認められていない場所に住む人もおり、彼らはそもそも住所がありません。


この地区は行政から居住地区として認められておらず、人々は住所がない場所で生活をしています。

感染経路を調べる際には本人の居住地、家族構成、職業などが必要です。しかし、日本のような戸籍制度も住民票もないこの国で、それらを明確にすることは、不可能に近いことです。

このことは以前から問題視されていましたが、今回の新型コロナウィルス感染症により、更に問題視されています。

フィリピン政府はこの問題を解決するために、「国民IDシステム」の実施の準備を行っているようです。このシステムにより、全てのフィリピン人がデータベースに登録されるようになります。
しかし、全国民のデータ登録完了目標を2022年までとしており、現在流行している新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止には間に合いません。

貧困地区で暮らす人々の未来

このように、感染拡大防止のための準備は少しずつではありますが進められています。5万人を雇用する予定である「コンタクトトレーサー」という職種はIT技術を必要とする為、教育を受けていない貧困層にはチャンスがありません。

また、「国民IDシステム」の準備を進めていますが、貧困層の人々はネット環境がありません。学校に行くことができていない貧困層の人々は、書類の手続きなどの読み書きをすることもできません。

感染拡大防止のために進められる対策ですら、貧困層は取り残されてしまっています。貧困地区で感染が拡大していることは誰の目にも明らかです。感染防止のためにも、この国の「貧困」という問題と向き合っていく必要があると強く感じています。