新型コロナウイルス感染症による様々な規制が続く中、台風22号がフィリピン・セブを襲いました。あれから1か月、人々の生活はどうなっているのでしょうか?
復興の格差
12月16日にセブを襲った台風22号の影響により、発災から長期に渡り、広範囲で停電と断水が続きました。発災から1週間以上が過ぎたころから、限られた場所で電気や水道が復旧していきました。しかし、幹線道路から離れた場所や、山岳地区、離島などが未だに復旧の予定すら立っていません。
今回の災害で、有事の際の貧富の差が改めて明らかになりました。貧困層は、お金がないため、生活に必要な水や食料すら手に入れることができない日々が続きました。一方、お金があれば水も買えて、電気や水道が出るコンドミニアムやホテルに避難することもできました。
壊れた家屋の修復スピードも、お金があるのとないのとでは、大きな違いが出ています。
完全に壊れてしまった自宅を再建するためのお金がありません。
オミクロン株なのか風邪なのか?
発災後から、貧困層は屋根もない家で、乾いた清潔な洋服も、生活に必要な水もないまま、栄養バランスの悪い食事を食べて生き延びています。そのため、多くの人々が体調不良を訴えています。
特に子どもたちの状態は深刻で、咳き込んだり、高熱を出して苦しんでいる子どもたちが多く見られます。しかし、その日食べるものすら買えない貧困層の被災者にとって、子どもたちの薬を買ったり、病院に連れていくお金はありません。
更に、病院に連れていくことで、今、セブでも蔓延しているオミクロン株と診断されることを、貧困層は恐れています。仮に陽性反応が出てしまえば、強制的に自宅隔離が行われ、生きるための日銭すら稼げなくなってしまうからです。
後回しにされる教育
フィリピンでは、2020年3月から一度も対面授業が再開されていません。それでも私立の学校や大学、また一部の公立学校ではオンラインでの授業が行われていました。しかし、今回の台風により、停電だけでなくインターネットもつながらなくなってしまい、オンライン授業もできなくなってしまいました。
更にオミクロン株の影響により、今月末まですべての授業(プリント配布とオンライン授業両方)が禁止さえています。このような状況の中で、長期に渡り、子どもたちから学ぶ機会が奪われています。
ワクチンカードがなければ買い物もできない!
現在、セブ市では感染予防のための規制が強化されており、ワクチン2回接種完了者に渡されるワクチンカードがなければ入れない商業施設が増えています。大型のショッピングモールや日用品を販売するスーパーですら、ワクチンカードがなければ入店できません。さらに、公共交通機関もワクチンカードの提示を求め始めています。
REUTERS COVID-19 TRACKERは2022年1月26日現在、57%の国民がワクチン接種を完了したと発表していますが、統計にカウントされない貧困層がたくさんいます。実際に、貧困地区で接種の有無を尋ねると、多くの人々が「打っていない」と答えます。
今後、ワクチン未接種者の行動規制が強化されることにより、日常生活に支障が出ることが懸念されます。
規制強化と現実の矛盾
感染予防には、手洗いうがいが重要です。しかし、被災地には飲み水すら十分にありません。
ソーシャルディスタンスも重要です。しかし、台風により家を失った被災者が、屋根のある親せきや知人宅、もしくは避難所で「密」な生活をするしかありません。
バランスの取れた食事も大切でしょう。しかし、貧困層の被災者に食の選択はありません。目の前にある、お米と缶詰やインスタントラーメンを食べるしかありません。
体調が悪ければ、すぐに検査をする必要があるのかもしれません。しかし、貧困層には診療費も薬代もありません。さらに、隔離が必要になった場合、生きる糧を失ってしまいます。
このような多くの矛盾の中で、フィリピンの貧困層は必死に生きています。
小さな子どもたちも、家族のために水汲みを手伝っています。
DAREDEMO HEROでは、貧困層が「この状況でも自分たちの力で生きていく力をつける」ための支援を目指して、活動を行っていきます。
引き続き皆様のご支援よろしくお願いいたします。