最貧困層の人々の手に職を
DAREDEMO HEROでは、フィリピン・セブ島の貧困層に暮らす人々を支援するための様々な自立支援活動を行っています。これまでの数々のセミナーやトレーニングを通じて、彼らが自らの力で貧困から脱却できるよう、継続的な支援プロジェクトを行ってきました。そのひとつが、美容師などの専門技術訓練の機会を提供するプロジェクトです。
先日、私たちが支援する貧困層出身の美容師訓練生たちが団体主催の技術認定試験を無事に終え、プロの美容師として最初の一歩を踏み出しました!
支援者の皆様にプロジェクトの成果をお届けするとともに、活動の背景や認定試験の様子、今後の展望についてお伝えいたします。
本レポートは、インターンのKanonが担当いたします。フィリピンの貧困層を取り巻く現状が決して一朝一夕で改善するものでないことは、活動を見守ってくださっている皆様はもうご存じのことと思います。このプロジェクトがどのように貧困層の参加者たちに自立の道を切り開き、団体が目指す「未来を変える力」の一助となったのでしょうか。活動に末端ながら参画した経験を通して、お伝えいたします。
▼これまでの活動について詳しくはこちら
プロジェクト概要
このプロジェクトは貧困層の人々に職業訓練の機会を提供し、彼らが経済的に自立することを最終目標としています。また、現地で活動するフィリピン人美容師のレベルを向上させ、収入増加を支援することも重要な目的のひとつです。
今回集まったのはセブ島内のカレタ、ラプラプ、イナヤワン、タプタプ地区の貧困層出身の候補者達です。彼らは過去2年間DAREDEMO HEROが開催してきたフィナンシャルリテラシー講習、及びライフスキルトレーニングの卒業生です。たとえスキルのみ身につけられても、そのスキルの活かし方や収支計算が出来なければ生活向上には繋がりません。そのうえで、美容に関心があり手先の器用な候補者の中から、最終認定試験を突破した人のみが美容師として活動をスタートさせることが出来ます。
他にもネイルやまつ毛エクステンション、マッサージ師など、職業訓練で身につけられるスキルには様々なものがありますが、美容師は即戦力として社会に貢献できる可能性が高い職業です。比較的少ない投資で始められる点も大きな特徴で、特に貧困地域においてはこの道が開けやすいと考えています。
最終審査の様子と成果
今年2月14日に団体主導のもと最終認定試験が行われ、今回すべてのスキルトレーニングが終了しました。
試験にはセブ島で活躍される日本人美容師ボランティアの方々にも加わっていただき、実技審査が行われました。最初は緊張しながらも真剣に技術を披露し、具体的なアドバイスを受けることで着実に成長していく姿が印象的でした。
無事に合格した彼らの表情に、長いトレーニングの努力が身を結んだ成果と誇りがしっかりと現れています。

真剣に聞き入る姿

矛盾と現実
貧困層出身の人々にとって、このようなスキルトレーニングを受けられる機会は私たちが想像する何倍も貴重なものです。
フィリピンの教育システムは『K-12制度』に基づき、小学校6年、中学校4年、高校2年の12年間の教育課程を設けていますが、この進学の過程で多くの貧困層の家庭の子どもたちは金銭的な障害に直面します。
特に最貧困層では月収が1万円以下で生活している家庭も多く、中学や高校に進学することさえ難しい現実があります。進学できなければ、その後の専門技術を学ぶ機会もほとんどありません。特にフィリピンの職業訓練校の多くは入学条件として高卒資格を必須としており、これが貧困層にとって大きな壁となっています。
このような状況を打破するためにも、技術を学び、自立できる道を提供する取り組みは非常に重要です。
嬉しいニュースと今後の展望
そして嬉しいことに、彼らの中からすでに美容師として働き始め、少しずつ収入を得られるようになった人が出てきました!
といっても彼らはサロンに就職したわけではなく、貧困地域にある自宅で美容師業を始めたのです。1人カットするごとに約50ペソほど(約130円)という少額ですが、着実に自分で稼ぐことが出来ていること、生活の糧となっていることを伝えてくれました。
少額ですが彼らの自立にとっては重要な一歩であり、支援が確実に成果を上げている証です。2人分のカットをして100ペソ(約250円)稼げれば、彼らは今日食べるお米を買うことができます。彼らが自分の力で生活を支え、希望を持ちながら前進している姿を見られることは、私たちにとって最大の喜びと言っても過言ではありません。
中でも特に優秀な成績を残したタプタプ(床屋のない貧困地域)出身の男性は、将来的には自分の住む地域に床屋を開業したいという意欲を語ってくれました。彼のような高い志を持つ参加者に対しても、私たちは今後も継続してサポートを続けていきたいと考えています。


最後に
今回の活動に参加したのは、若者に限らず性別も年齢も様々な人々でした。
はじめに述べたとおり、この取り組みは単に技術を身につけることだけが目的ではありません。貧困層の人々が経済的にも精神的にも自立し、自分の力で生活できるようになるための第一歩を提供するものです。
しかし、これは明らかに一筋縄ではいかない道です。意欲もあり、夢も固い意志もスキルもあり、けれどただ生まれ育った環境という一因だけで、いくつもの可能性を制限されてしまう人々が沢山存在するのが現実なのです。
DAREDEMO HEROは、引き続き支援を通じて、貧困層出身の多くの人々が夢や目標を追い求める力をつけるためのサポートに尽力してまいります。
謝辞
当事業は、真如苑様の助成とDONNA Cebu Montebello Japanese Hair Eyelash Nail Salon様のご協力の元、多数の日本人美容師ボランティアの方々にご協力いただき実施しております。貧困層の人々が美容師を目指すにあたって必要なハサミなどの道具は全て、ボランティアの方々からの寄付によるものです。
この場を借りて深くお礼を申し上げます。
