「パグパグ」という言葉を知っていますか?フィリピンには最低限の衛生的な食べ物すら口にすることができない人々がいます。DAREDEMO HEROでは、そんな貧困層の食の改善のための事業を行っています。
不衛生な食事
私には決して忘れることのできない光景があります。セブに来て数日後、セブ市内のダウンタウンにあるカルボンマーケットに子どもたちの食材の買出しに行った際のことです。
カルボンマーケットは、セブ最大の市場で古着、生花など様々なものが売られており、何より新鮮な食材は豊富に売られています。そんな場所で私は道に落ちているビーフンを拾って、薪でゆでて食べようとしている子どもたちに出会いました。
まだほんの3,4歳の子どもたちが、火を使って調理をしていることにも驚きましたし、何より周囲には保護者と思われる大人は誰もいませんでした。そして、周囲の大人も特に気に留める様子もありませんでした。
日本では決して見ることのないこの光景を、私は忘れることができず、なぜこのような状況になっているのか、フィリピンの食や衛生の改善のために、自分に何ができるんかを真剣に考えるようになりました。
「パグパグ」とは
フィリピンの食事情を調べていると、フィリピン人スタッフがひとつのドキュメンタリー映像を見せてくれました。そこには、廃棄された残飯をゴミの中から集め、それらを洗って調理し、販売している人々の様子が映されていました。
これらの料理は「パグパグ」と呼ばれており、スラム街に住む人々などの中には、このような安価に手に入る不衛生な食べ物を食べざるを得ない人々もいます。この「パグパグ」という単語は、フィリピンで主に使用されているタガログ語の「振り落とす」という意味を持つ「pagpag」からきています。文字通り、残飯に残っているお肉を振り落とし、それらを調理するのです。調理工程は以下の通りです。
①スーパーマーケットや飲食店の廃棄物の中から使用できそうな肉や米などを探し集める
②水で洗い、よごれを落とす
③調理、販売する(ニンニクやスパイスを用いることが多い)
購入する人たちはこの工程を知りながらも、安価であることがゆえに「パグパグ」を食すのです。「パグパグ」に使用される鶏肉は、安価なものであれば1袋約40円、提供される料理は1皿約40円で売買されています。
セブ版パグパグ「アライス」
私が見た映像はマニラのものでしたが、私たちが日々活動しているセブのゴミ山でも同じことが行われています。セブでは、パグパグとは呼ばずに「アライス」と呼ばれています。呼び方は違いますが、工程は同じです。
このように、残飯の中からまだ食べられるお肉のかたまり(奥に取り分けられているもの)を探し、再調理します。残りの残飯は豚の餌として販売されます。
「パグパグ」の危険性
「パグパグ」に使用されている食材は残飯であるため、その衛生状態は当然ながら保証されていません。廃棄される際にはたばこや虫などと一緒に袋に入れられ、さらには食材が腐食している可能性も考えられます。これらは菌の繁殖や毒素が発生につながり、健康状態に悪影響を及ぼしかねません。また、食品を媒介した病気の危険性も指摘されています。
このように「パグパグ」は非常に危険であり、フィリピン政府により警告もなされています。したがって購入者もその危険性を十分に理解してはいるのです。しかしそれでもなお、貧しさがゆえ「パグパグ」を食べざるを得ないのが貧困層の現状です。
まとめ
フィリピンには、このように日本では考えられないような不衛生な食事しか口にできない人々がいます。彼らには選択肢はなく、空腹を満たすためには、目の前にあるものを食べるしかありません。
お腹がすけば、衛生的で安全な食事をいつでも食べることができる環境で育った私にとって、まずは彼らの抱える問題や現状を知ることが大切です。そのためにDAREDEMO HEROでは味の素様のご支援を受け、貧困層の実態調査に基づくコミュニティー主体の栄養改善事業を行っています。
彼らの現状をしっかりと理解したうえで、現状に合った持続可能な改善策を見出し、彼らの食の改善を実現していきます。同時に、このような現実を、多くの方々に知っていただくための発信を続けていきます。
皆様のご支援、ご協力よろしくお願いします。