これまで3年間継続してきた山岳零細農家の収入向上に向けた支援ですが、この度、新たに日本から農業インターンを迎えて、本格的に再始動します!
▶これまでの活動は「こちら」をご覧ください。
農業インターン「禅」
昨年、JICA草の根技術協力事業が採択され、本格的に農業支援を行っていくことが決定しました。どのように事業を進めて行くかを模索していた時、運命の出会いがありました。たまたまセブ島に留学をしていた若者(禅)が、実は日本で有機農業のNPOで働いていた経験があり、セブの現状を知って「セブで農業をやりたい!」と考えているとのこと!
早速会って話をしていくうちに、色々と意気投合し、一度日本に帰国後に改めて長期的にセブに滞在し、農業指導に従事してくれることになりました!


さらなる運命の出会い Casa Japonésa
インターンが来ることが決まっても、滞在先や耕す畑がなければ事業は進められません。日本人が安全に滞在出来て、思いっきり農業ができて、さらに低予算で借りられる場所なんて、本当に見つかるのか?
そんな心配をよそに、またしても運命の出会いがありました!支援地区に広大な土地を持つ方から、「うちの土地を使っていいよ」と言っていただけたのです。果たしてどんな場所なのかと視察に行った際、私たちは完全にその場所に心奪われてしまいました。広大な農地と美しい景色、さらにインターンが住む家の名前は「Casa Japonésa(日本人の家)」!
この家はオーナーさんが昔、JICAの事業で日本人と関わることがあり、その方との友情の証として建てたものだそうです。その方がいなくなってから長年、誰も使っていないということでした。これはまさに運命だ!ということで、この地に根を張り、農業支援を本格的にスタートすることにしました!


試行錯誤の始まり
いくら日本で農業経験があると言っても、日本とセブでは全てが違います。土壌、気候、水源、使える農機具などなど、すべてがゼロからのスタートです。まずは現地への聞き取りや、市場調査を徹底的に行い、現地の人たちだけでも継続可能な方法で農業を進める必要があります。


調査を進めて行く中で、改めて浮き彫りになってきたのが、農家の人々を取り巻く過酷な環境です。日本では考えられないほどのやせ細った傾斜地で機械も使わず、水牛や人力だけで畑を耕し、収穫のために何十キロという野菜を何時間もかけて運び、最終的に収益としてもらえるのは、月1万円程度です。
化学肥料の価格は高騰を続けています。しかし、一度化学肥料を使った土地では、化学肥料を使い続けるしかありません。しかも必要な量は年々増えていきます。有機への転換は決して簡単なことではなく、知識だけでなく時間と労力、一定の経費も掛かります。
仲買人による中間搾取も大きな問題ではありますが、仲買人を排除することは問題の根本解決にはなりません。作物を作り始めるには、肥料や種など初期費用が必要ですが、それが手元になく、作物を育て始めることができない農家もいます。そこで農家の人々は、初期費用を借金して、作物を作り始めます。そのお金を貸してくれるのが、仲買人であることが多いのです。
そのため、せっかく野菜が出来ても、借金の返済と仲買人による中間搾取により、手元に残るお金はほとんどありません。そして、次の作物を育て始めることができずに、またお金を借りなければいけないという負のループから、自分たちの力だけで抜け出せずにいます。中間搾取を減らして直接販売を行うにしても、これまでの借金の清算、さらに今後の長期的に安定したマーケティングの確保が必要です。


現地行政との協働
農業支援を行っていくためには、現地行政との連携は欠かせません。これまでも全ての事業において、現地との連携のもとで事業を進めてきましたが、今回はこれまで以上の連携が必要です。何度も議会との話し合いを行い、今後の方針を決めています。最終的には私たちのような外部の力がなくても、現地行政が中心となって収益性の高い農業を継続できることが大切です。
まずは、科学的な根拠に基づいた土壌改善を行うためにも、行政と連携をして土壌調査を行っていきます。さらに、これまでの行政の取り組みなどを洗い出し、成功と失敗から学んでいこうと思っています。


希望と願い
この事業が目指すのは、農家の収入向上です。炎天下の中、急斜地で長時間の重労働を続けている農家の人々が、子どもを小学校にすら通わせることが出来ない現状はあってはならないことです。農家の方々が自分たちの力でしっかりと収入を得て、子どもたちを大学に通わせることができる、必要な時に病院に行ける。そんな状態を目指していきます。
また、この地を中心として、たくさんの日本人にセブの農家の現状や、自然の美しさを知って欲しいと思っています。山岳地域での生活は、決して苦しいだけのものではありません。たくさんの愛と思いやりにあふれた、緩やかな時間が流れています。まずは知ってもらうこと。そしてたくさんの人々を巻き込んで、この地(TAPTAP)をセブで一番豊かな農業地帯にしていきたいです!

