これまでの歩み
DAREDEMO HEROでは「保護者が子どもたちに必要な教育を提供できる」本来あるべき姿を実現するために、保護者のライフスキルや所得、地域力の向上を目指し、様々な自立支援活動を行っています。その一つが風に立つライオン基金様のご支援を受けて行っている女性の権利と健康衛生の向上事業です。
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1年の振り返り
先日、支援地域の保健医療従事者や医師たちとともにミーティングを行い、これまでの活動の振り返りと今年度の目標設定を行いました。ミーティングでは、若年妊娠経験者インタビュー動画を視聴し、知識不足や親とのコミュニケーション不足が原因で早期に妊娠し、学業を断念して将来の夢を諦めることや、出産によって貧困状況が悪化し、母子ともに栄養不足に悩んでいるというリアルな声を聞くことができました。
また、若年妊娠が多い原因についても議論を行い、ソーシャルメディアの普及や、親世代が性に関する話題についてオープンであることが挙げられました。この課題に対して、10代の未来を守るためにはネットリテラシーを高めることが重要であり、大人たちの言動に配慮が不可欠であることを学びました。
今後の目標では得た知識を広め、プロジェクトの拡大や性感染症を減らすためのセミナーを開催することが掲げられました。

各支援地域振り返りセミナー
さらに、各支援地域で、昨年度学んだ知識を振り返るセミナーを開催しました。参加者の中には子育てをしている男性の姿も見られました。遠方から参加する人々も多い中、数時間にわたって真剣に話を聞く姿から、親世代が現状に対して強い問題意識を持ち、子どもたちの未来を守ろうという熱い思いを感じました。
このセミナーを通じて、地域の保健医療従事者たちの知識が深まり、対応能力が向上していることが確認できました。また、若年妊娠に対する問題意識が高まり、地域社会がこの課題に取り組むための一歩を踏み出していることを実感しました。私たちDAREDEMO HEROがその一歩を支援できていることに、大きな意義を感じています。

妊娠についての学び
昨今、最貧困地域では若年妊娠が深刻な問題となっています。支援地域の一つであるラプラプでは、13歳や14歳の子どもを含む多くの10代の若者が、正しい知識を持たないまま性交渉を行い、望まない妊娠をしてしまうケースが後を絶ちません。
この背景には、フィリピンに根強く残る宗教的価値観の影響で基本的な性教育が学校では行われておらず、避妊が広く普及していないことが挙げられます。そのため、パートナーと計画的に家族を築くことが非常に重要です。
2月のセミナーでは、地域のヘルスワーカー(保健医療従事者)を招き、妊娠に関する正しい知識を学びました。また、妊娠中の生活習慣や食事、病院に通う頻度についても説明しました。一部の地域では迷信や言い伝えが根強く残っており、誤った知識によって母子の健康が脅かされることもあります。
日本では義務教育の中で学ぶ保健体育の知識。しかし、学校に通えない貧困層にとっては、こうした情報を得る機会が限られています。そのため、正しい知識の普及が極めて重要なのです。
「妊娠=責任」— ヘルスワーカーが真剣な表情で語った言葉です。
子どもを育てるにはお金と十分な食事が必要です。しかし、貧困層に生まれた若者は学校に通えず、知識のないまま性交渉をし、望まない妊娠を経て出産。そしてまた子どもが教育を受けられないまま成長していく…。貧困の悪循環が繰り返されています。
本来、妊娠は喜ばしい出来事であるべきです。しかし、適切な準備や環境が整っていない場合、それは母子にとって危険を伴い、時には悲しみを生んでしまうのが現実です。妊娠には責任が伴う—それを一人でも多くの若者に伝えることが求められています。

各地方で今年度の振り返り
山岳地域に位置するタプタプでは、これまでNGOによる事業の実施が少なく、住民が得られる知識や経験も限られていました。そうした中で、この一年間にわたる当事業を通じた学びは、彼女たちにとってまさにかけがえのないものとなりました。
一年の締めくくりとして行った振り返りの場では、受益者から学びの共有や、当事業に対する熱い想いが語られました。
特に、死産や流産を経験されたお母さんたちを対象としたピアカウンセリングでは、これまで言葉にできなかった深い苦しみや悲しみが少しずつ和らぎ、前を向くきっかけとなったようです。
涙ながらに自身の体験を多くの人の前で語る姿は、悲しみを乗り越えた彼女たちの、強く美しい生きざまを映し出していました。

今後の展望
来年度も引き続き、風に立つライオン基金様のご支援のもと、女性の権利向上を目的とした事業を継続できることとなりました。心より感謝申し上げます。
これまで当事業では、ピアカウンセリングや各種セミナーを通じて、女性たちが自らの声を取り戻し、知識を深める機会を提供してきました。来年度もその取り組みを引き継ぎながら、深刻化している「若年妊娠」の課題に焦点を当てていきたいと考えています。
今年度は若年妊娠を経験した女性に職業訓練の機会を提供し、また彼女たちやその親世代を対象としたセミナーを継続し、地域住民に向けた啓発活動や支援体制の強化を進め、知識の普及と意識の変化を促していきます。
地域社会と連携しながら、子どもたちの未来がより明るいものとなるよう、そして貧困の悪循環を断ち切るために、今後も尽力してまいります。