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ラマダン明けは国民の祝日!?フィリピンのイスラム教事情

ラマダン明けは国民の祝日!?フィリピンのイスラム教事情
公開日: 更新日:

本日6月5日はラマダン明けのため、国民の祝日です。キリスト教徒がほとんどのフィリピンですが、実はフィリピン南部には多くのイスラム教徒が住んでいます。今回はフィリピンとイスラム教との関係についてご紹介します。

ラマダンってなに?

ラマダンとはイスラム教徒の果たすべき義務の1つです。イスラム歴第9月の1カ月間、日の出から日没まで飲食が禁じられます。毎年ラマダンの時期は異なりますが、フィリピンではラマダン明けは国民の祝日となります。

フィリピンにおける宗教事情

フィリピンでは、人口の約90%以上がキリスト教を信仰しています。当団体の子どもたちも全員キリスト教です。
イスラム教を信仰する人はフィリピン全人口の約6%であり、フィリピン南部のミンダナオ島やスールー諸島に多く居住しています。

フィリピンで一番大きなモスクの一つであるグランドモスク

フィリピンにおけるイスラム教の歴史

ここではフィリピンにおけるイスラム教の歴史をイスラム教伝来~アメリカ統治、アメリカ統治~現在に分けてご紹介します。

イスラム教伝来~アメリカの統治まで

イスラム教がフィリピンへと伝わったのは13世紀ごろとされています。15世紀中ごろには、イスラム教の王国がフィリピン南部に出現しました。
16世紀にスペインが植民地化のためにやってくると、それらイスラム教の王国との間で戦争が勃発しました。スペインの人々は、彼らイスラム教徒を野蛮な敵であるという軽蔑の意味を込めて「モロ」と呼びました。19世紀後半にはアメリカによる植民地化が始まり、キリスト教以外の宗教は劣っているという文明観を広めました。このようにスペインとアメリカの植民時代を経て、フィリピンのイスラム教徒には否定的なイメージが付与されていきました。

アメリカ統治~自治権の獲得

1970年代から南部フィリピンではフィリピンからの分離を求める分離運動が始まりました。
彼らはモロ民族解放戦線(MNLF)を結成し、ムスリムの権利獲得と南部フィリピンの貧困の解決を目的として運動を行いました。
その後、国際社会の介入もあり、1989年に南部フィリピンの4州がムスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)となることが決定しました。そして、MNLFも当時の大統領と和平合意を結び、反政府組織としての活動を終了しました。
その後はMNLFから分離したモロ・イスラーム解放戦線(MILF)が反政府運動を続けていましたが、昨年、イスラム教徒の自治政府樹立を認める法律が制定されました。今年1月には住民投票が行われ、ミンダナオ島のいくつかの州などがバンサモロ暫定統治機構(BTA)の領域となりました。BTAの首相代行にはMILFの議長であるムラド・イブラヒムが就任しています。

BTAに関する会議の様子

セブのイスラム教事情

南部フィリピンに多いイスラム教人口ですが、セブにもイスラム教の方々はいます。政府の統計によると、セブ市の人口の0.4%ほどがイスラム教徒です。モスクもいくつかあり、空港にはあらゆる宗教の人のための祈祷部屋もあります。
当団体の支援する子どもたちが通う学校にも何人かイスラム教徒の学生がいます。今回は当団体の子どもたちに話を聞いてみました。
子どもたちの通うタランバン小学校・高校には一学年800人ほどの生徒がいますが、ほぼキリスト教徒です。イスラム教徒は、わずか数人でそのほとんどが男性のようです。ただ、子どもたちも言っていましたが、イスラム教徒であるかどうかは見た目だけでは分からないため、正確に何人いるのかは分かりません。
フィリピンの学校では授業開始前などにキリスト教のお祈りを行います。タランバン小学校・高校も同様です。お祈りの間、イスラム教徒の生徒は他宗教への尊敬を表すため、静かに聞いていているそうです。


       空港の祈祷部屋の表示

多言語多文化が共存する国

フィリピンの公用語は英語とフィリピン語ですが、各島にそれぞれの言語がありその数は170にのぼると言われています。その言語の数だけの文化があり、スペイン系や中華系の人口も多いため、フィリピンは多言語多文化が入り混じる国です。多くのフィリピン人は上記の子どもたちのように自分とは異なる文化や宗教に対し尊敬の念を持って行動をしています。幼いころから自分とは異なる言語や文化を持つ人々と接する機会が多いため、偏見を抱くことなく対応できるのではないかと思います。近年、日本でも外国人人口の増加に伴い、他文化の人との交流の機会が増える中でフィリピンの人々から学べることが多いのではないでしょうか。

参考:吉澤あすな(2013)「南部フィリピンにおけるムスリム―クリスチャン関係の歴史と言説―インターマリッジの理解に向けて―」『アジア・アフリカ地域研究』13(1)

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